体験発表

文字起こし原稿

皆さんこんにちは横浜市在住の者です。去年の4月に人工内耳の手術を受け丸9か月がたちました。ごく自然な感じで装用しています。今日も装用しています。これまでの経験をありのままお話します。先ほど岩崎先生のお話の中で片耳の難聴のお話がありました。この中で片耳の方は何人いますか。途中お聞き苦しい点がありましたらご容赦ください。
H19年ある日、電話をかけようとして受話器を上げると、発信音が聞こえない、あれ、電話の故障かな?右耳に充てると発信音が聴こえる、もう一度左耳に充てると聴こえない。まさか嘘でしょう聴こえないなんて、それからあわてて近所の耳鼻科に行きました。なんでもっと早く来なかったの。残念だけどもう手遅れで治らない、と言われました。えー そんなぁ ショックでした。左耳が聞こえないなんて夢にも思いませんでした。今思えば、思い当たる節はいくつかありました。それはめまいや、自分の声がこもり、頭の中で響いてちょっと鬱陶しい日々が続いていましたが、日々の忙しさにかまけて、時間がたてばそのうち治るだろうと軽く考えていました。お恥ずかしいですが、突発性難聴という病名すら認識不足で先生に言われて初めて知りました。先生に治らないと言われたので左耳は治療することもなく、そのままの状態でした。その年のある日、せみの鳴き声が非常にうるさく、目の前が公園なのでそこから聞こえているのかと耳を澄ましてみると、なんと左耳から耳鳴りとして聞こえていました。この日から去年の7月まで7年間、耳鳴りに悩み、苦しむ日々がずっと続きました。なぜ治療しなかったかというと、耳鼻科の先生に治らないと言われたことが本当にショックだったので、耳鳴りも治らないと言われたらどうしようという思いがあったので耳鼻科に行こうとは思いませんでした。そして日々の生活に追われる毎日が続いていた、平成20年に、右足脱臼粉砕骨折の大怪我をしてしまい、約3ヶ月ベッドの上での生活を余儀なくされました。そのときは耳よりも足の怪我の治療に専念する日々が続きました。足の再手術を、怪我をしてから2年後の平成22年8月に行いました。入院先の病院に耳鼻科があったので、もしかしたらとかすかな望みを持って、診察を受けましたがやはり結果は同じでした。これで難聴は治らないんだと完全に諦めがつきました。ただ、耳鳴りはますます音が大きくなり、うるさく感じるようになり、なんとかしてほしい、という強い思いが常にありました。足の怪我をしたため、耳鳴りはいっそうひどくなりました。足の再手術を経て少し動けるようになって、少し気持ちに余裕が出てきたころ県の広報誌で聞こえに関する講座で参加者を募集する記事を見つけ、応募し、参加することにしました。少しは耳鳴りに関する情報が得られればとすがる思いでした。耳鳴りを自覚してからおよそ5年後のことです。その講座で初めて人工内耳診療のことを知りましたが、自分には関係のない話だと、そのときは真剣に聞きませんでした。まさか後々自分が人工内耳をすることになろうとはそのときは夢にも思いませんでした。その講座で私の主治医の横浜市大の高橋先生と知り合い、平成24年3月から、6ヶ月に一度の定期健診を受けることになり、現在も通院中です。初診のときに、コミュニケーションがうまくとれないことを先生にお伝えすると、耳鳴りの治療よりも聞こえに対しての対策を考えてくださいました。右側が正常なのでクロス式の補聴器をすすめられ、平成24年5月に購入しました。購入した日にセンターの人に、家に帰るまで着けていてくださいといわれました。着けた瞬間まず、空調の音が気になったこと、電車に乗ると隣の車両での新聞紙のガサガサやスーパー袋のガサガサが耳について仕方がありませんでした。耐えがたいでも我慢我慢、家につくなりすぐにはずしてしまいました。それから数回補聴器センターでリハビリを受けましたが、なかなか慣れず、耳がかゆくなり、はずしている時間が長くなっていきました。クロス式のため、携帯電話が鳴ると右側をはずさないと通話ができない不便さや、左側の人の声が聞きたいのに右側の後ろにいる全く他人の声がはっきり入ってしまったりで、補聴器で思った以上の効果は得られませんでした。多少慣れようとはしましたが、補聴器は耳の穴に入れるためどうしてもかゆみが生じてしまうのでなじめなかったです。ただ、補聴器センターの方が、いいほうの耳を大事にしてください、テレビ、ラジオ、スマホ等でイヤホンで大音量で聞かないようにしてくださいと。イヤホンで聞くのは耳にとても負担が大きいそうです。だから私も以前はイヤホンで聞いたりしていましたが、言われてからはやめました。いいほうの耳までは悪くしたくありません。そんなわけでまたコミュニケーションがとりにくい状況に戻ってしまいました。私と私の周りの人、特に家族が私と話をしているといらいらしてしまいます。家族にストレスを感じさせていることが自分のストレスも増幅させてしまいました。平成26年3月、定期健診で高橋先生が聞こえも耳鳴りもよくなる方法、人工内耳の話をしてくださいました。検診のたびに補聴器の不具合を訴えていたから、とっておきの手として話をしてくれたんだとおもいます。このとき、岩崎先生を紹介してくださいました。耳鳴りがよくなると聞いたらいてもたってもいられず、その日の午後三田病院の岩崎先生に会いに行きました。岩崎先生から人工内耳の仕組みや手術の方法、聞こえと耳鳴りの改善等のお話がありました。そのお話の中で先生が一言、耳鳴りがよくなるよ、ヨーロッパでは人工内耳の人口がどんどん増えているのだよ、と言われました。先生の、耳鳴りがよくなるよ、の一言で、わたしはその場で、ぜひ手術をお願いします、と言いました。今以上耳鳴りが悪くなることはないだろうと思い、先生の一言を信じました。主人の了承を得て、手術日が4月22日に決まりました。耳鳴りがどう変化するのか、聞こえがどのように聞こえるのか、怖さよりもわくわく感でいっぱいでした。というのも足の大怪我の手術が本当に大変で、何度も手術を受けたのでそれ以上のことはないだろうという思いがあったからです。
ここからは入院中の日記から抜粋しました。
4月22日手術日、麻酔から覚めて、半分ぼーっとしている感じが残って、頭の一箇所に違和感があり、だんだんと目が覚めるのと同時に痛みが増してきた。枕は使用禁止、寝にくい。なにかに押されている感じ、頭の締め付け感がきつい、夜中に痛み止め一錠飲んで寝た。以前、痛みは我慢してはだめと看護師さんに言われ、それからは我慢しないことにしたので痛み止めをもらった。
23日、頭がぼーっとしている。むかつき、食欲まったくなし、めまいあり、耳鳴りも変わらず。
24日、8時にガーゼ交換、締め付け感あり、軽い頭痛。頭を下げると少々むかつきあり。耳鳴りかわらず。
25日、朝5時お腹がすいて困った、ゆうべはよく眠れた。少々くらっとするが術後の気持ち悪さはない。午後、岩崎先生自ら処置をしてくださり、その際傷口がとても気になったのでお聞きすると、写メをとってもいいと言われたので主人の携帯から自分の傷口をみることができた。耳の付け根が切ってあり、後々傷口が見えないように切ってあったのでほっとした。きつい締め付け感がある包帯から、ネットの包帯になったので頭が軽くなった。頭痛のような痛みもなく、楽になった。今日で手術から3日目リハビリ開始。リハビリは入院中のみ行う。リハビリの内容は、手術した側、左側を下に一回10分間寝たままの状態を一日10回の計100分行うこと。
26日、ネット包帯も取れスッキリ。頭が軽くなり、頭痛もなくなった。処置のときお風呂の許可が出た。シャワーを浴びスッキリさっぱりした。シャンプーは少々怖かった。あくびがまだしずらい。点滴終了、22、23、24、25,26、朝夕一本ずつでした。
27日、朝から服薬が始まる。左側の痛みが少しずつ和らいでいる。音入れが5月19日に決まる。
28日、体調戻る、食事がおいしい。耳の奥に水がたまっているため処置してもらった。処置後、リハビリのとき耳の圧迫感がなくなった。
29日、痛みは昨日よりさらに楽に。特に耳の圧迫感がなくなった。かゆみは強い。夕方抜糸、耳のしびれはまだあり。服薬、夜で終わり。
30日、予定どおり退院。10日間入院。帰りに食材購入のためスーパーに寄る。人ごみには少し目が回った。
1日、気分は普通。人工内耳のあたり、違和感と、押されると痛い。
2日、晴天、気分爽快。舌が術後からざらざらと荒れている。味覚はわかる。
3日、犬の散歩も普通に行けた。シャンプーはまだまだ思うようには洗えない。
5日、曇天、震度3の地震で飛び起きた。そのせいか頭が重い。はっきりしない、目が回る。
7日、仕事に復帰、ふわふわした感じが少しあるがスムーズに動けた。自転車に乗れた。スピード出さずにゆっくり乗った。疲労感はあまり感じない。
8日、晴天だと頭の重さがない。ほとんど普通の生活にもどる。ただ、シャンプーは毎回恐る恐るそーっと洗う。
9日、手術して二十日が経過、人工内耳のあたりを押されて痛い感じがだいぶ緩和した。あごの付け根の違和感、舌のざらざら感もなくなってきた。耳のしびれは上半分はあり。まだ思い切り噛めない。噛むと耳の奥が痛い。
15日、耳の耳鳴りは変わらず。
16日、時間がなくバタバタ動き回ると左の耳が重たい。時間に余裕をもって動かないとピリピリと耳の違和感がある。
17日、昨日動き回ったせいか、めまいや集中力が欠ける。
19日、音入れ当日、音入れと言われても理解できず、やってみて初めてわかった。何年も音を感じてないからちゃんと聞こえるだろうか、少々緊張する。聴力の先生から今日の内容の説明があり、作業が始まった。まず私が聴き取りやすいデータを先生がプロセッサに入力、マップの作業を行う。次に聴き取りの作業。スピーカーから流れてくる音を集中して聞き取る作業。ん?川?もも?おじいさん?ところどころ聞こえた。ただし機械を通しての音なので右耳とは全く違う音。ヘリウムガスを吸った後のあの声で聞こえた。川、もも、おじさん(高い声で)、こういう声で聞こえた。聴力の先生がなにをいっているのかわかりますかと聞かれ、その後一冊の本を出してくれ、その本を目で追うといっている内容がわかった。日本昔話、桃太郎の話だった。数字と、単語と、作業が続いた。低い音はとても聞き取りやすい。高い音はききとりにくいというより耳鳴りと同じような音だとめまいが起きた。でもとても不思議、装用すると耳鳴りが聞こえない。はずすと聞こえる。夕食の片付けの食器洗いをしていると主人の声が聞こえた。今までだったら声がしたらそばまで行って話しをしていたのに、うそみたい、驚き。今日は初日なので1時から4時35分まで、よる8時から9時15分まで4時間50分装用した。左耳は10年間音を拾うことがなかったので音に慣れないため非常に疲れた。
20日、スピーチプロセッサのボリュームを少し上げると、遠くでないているカラスの声を拾った。
21日、今日一日着けなかった。23日、友人とランチ。10時から15時15分、5時間15分着けた。外だとまだ聴き取りにくい。でも補聴器のようにうっとおしさがない。
24日、すこし疲れているのかだるさ、ふらつき、めまいあり。
28日、めまい、ふらつきあり、少し音が認識できるようになってきた気がする。
29日、バスツアーに参加。半日装用しいた。バスの座席の左側の人の声がわかった。夜はずすと耳鳴りがはげしい。
30日、朝から頭が痛い。昨日無理してバスツアーに参加したせいかなぁめまいが激しい。ぐるぐると回る感じもあった。今日は一日つけなかった。耳鳴りも激しい。一日中内耳のあたりが痛い。
ここで日記の抜粋は終了
 
6月17日、音入れしてから約一ヶ月検診、方向感の検査で術前のときは幅が広かったが、今日の検査では若干狭くなっていると検査の先生に言われた。左側から言葉が入っている感じがする。耳鳴りは変わらず。
6月20日
自転車に乗り久しぶりに左耳から風の音を感じた。とても心地良かった。
 
7月31日、リハビリ、装用時間一日3時間から5時間。全く装用しない日も週に2日くらいある。耳鳴りは軽減され、仕事中はわすれていることがよくある。耳鳴りは装用してなくても気にならなくなった。方向感はまだ厳しい。この日聴力の先生に厳しい言葉をもらった。音入れしてから装用している時間が短いねと指摘され、長く装用すると疲れるのはわかるけど、少し努力しないと同じところで足踏み状態、いつになっても前に進まないよ、慣れだよ慣れ、がんばって、と言われた。頭ではわかっているんだけど辛いんだよう、
8月19日、音入れしてから3ヵ月後、装用時間一日3時間から4時間、外出時必ず装用。装用していると耳鳴りは聞こえない。装用しないときも耳鳴りは気にならない。方向感は少しわかるようになった。居酒屋で友人と飲み会、周囲の雑音も大きく拾ってしまうが、会話が大きくクリアに聞こえた。
11月18日、音入れから6ヵ月後、装用時間半日、外出時必ず装用。耳鳴りは全くきにならなくなった。方向感の検査で、3ヶ月検診のときよりもさらに幅が狭くなった。検査の先生が大絶賛してくれた。このとき自分でも実感できた。右なら右、左なら左から出る音がはっきりわかった。うれしかった。正直音入れして3ヶ月は辛かった。装用するとビル建設現場のガンガンドンドンというような音との戦いでした。それに加えて、右と左から入ってくる音の違いにも苦しみました。術前の岩崎先生の話でも、音はだんだんなじんでいくよとたしかおっしゃったけど、いつどのくらいの時間の経過でなじんでいくのか、このときは待ち遠しい思いでリハビリに励んでいました。傷口が治ってきて、装用しても痛くなくなってきてからは装用時間がどんどん長くなっていきました。そして先にも述べましたが、耳鳴りがうそのようになくなっていきました。耳鳴りが全くなくなったわけではありませんが、音の変化、大きさの変化で気にならなくなっていきました。今ではストレスをで、耳鳴りを感じるとあえて装用するようになりました。聞こえに関しても、以前左側の人は口パク状態でなにを言っているのかわかりませんでしたが、装用すると、大抵の声は聞こえるようになりました。音がなじんだと感じるようになったのは6ヶ月検診が終わった後からでしょうか。まず自分の声が右側と同じように左側から聞こえたときはとてもとてもうれしかったです。それと、方向感もわかるようになり、今では車がどっちから来るのかもわかるようになりました。あのとき聴力の先生の一言がなければ必死にリハビリに取り組むこともなかったと思い、こうしてみなさんの前でお話しすることもなかったと思います。岩崎先生を始め多くの方に支えてもらって、ここまでくることができました。ほんとに感謝でいっぱいです。少しの勇気と少しの努力と少しの我慢で道は大きく開きます。そして少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。これで私の経験談を終わります。ありがとうございました。
 
Q&A
Q, 手術をして、自分の感覚としては聴覚に不安がなかった時代と今の状態ではどうなのか?
A, 感覚は今のほうがぜんぜんオッケーです。手術前は左側の音がぜんぜん拾えなかったので不安だったが、今は全体の音が聞こえるのでとてもよいです。
 
Q, 左耳も聞こえていた時代と比べてどうなのか?
A, 昔に戻った感覚です。

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